M-aid web版 Vol.36
平成25年度税制改正の主な改正点
平成25年度の税制改正案が平成25年3月29日成立し、平成25年4月1日施行されました。
そこで今回は主な税制の改正点をその開始時期別に一覧でまとめました。
平成25年4月1日以後開始事業年度より
子や孫などに対する教育資金の一括贈与に対する贈与税の非課税制度の創設
前回M-aid vol.35で解説したものです。
中小法人の交際費課税の特例の拡充
今まで税務申告上では、交際費のうち600万円までの金額の90%を損金として認められていましたが、交際費のうち800万円までの全額が損金として認められることとなりました。
生産等設備投資促進税制の創設
青色申告書を提出する法人が国内の設備投資を一定金額以上増加させた場合、その設備投資金額のうち機械装置の購入金額の30%を特別償却して経費とするか、機械装置の購入金額の3%を法人税から控除するかを選択できる制度が創設されました。
商業、サービス業、農林水産業活性化税制の創設
青色申告書を提出する一定の事業の中小企業で、中小企業庁から認定を受けた、商工会議所、金融機関、弁護士、税理士、コンサルティング会社等の認定経営革新等支援機関から経営の改善に関する指導及び助言を受けて行う店舗の改修等を行った場合、その改修にともなって取得した一定金額以上の器具備品や建物附属設備を、購入金額の30%を特別償却して経費とするか、購入金額の7%を法人税から控除するかを選択できる制度が創設されました。
所得拡大促進税制の創設
青色申告書を提出する法人が給与の支給額を一定の割合以上増やした場合、中小企業者についてはその増加額の10%を法人税から控除できる制度が創設されました。以前からある雇用者の数を増加させた場合の税額控除(雇用促進税制など)と、どちらかを選択して控除できます。
雇用促進税制の拡充
ハローワーク等に確認を受けた雇用者が一定数以上増加した場合に雇用者1人当り最大20万円をその期の法人税額から控除できる制度がありましたが、控除できる金額が雇用者1人当り最大40万円に引き上げられました。
研究開発税制の拡充
試験研究費を支出した場合に税額が控除される制度を利用した場合の軽減される法人税の金額が、現行ではその期間の法人税額の20%までだったものが30%に引き上げられました。
環境関連投資促進税制の拡充
グリーン投資減税として一定の規模以上の太陽光、風力発電設備を設置した場合に設置金額の全額を設置した時に経費として処理できる制度の対象設備に一定のコージェネレーション設備が追加されました。
平成26年1月1日以降
少額投資非課税制度(NISA)の創設
個人が金融機関で非課税口座を開設し、その口座内の資金で1年間に購入する元本金額100万円までの株式や投資信託に対応する配当金の受取、譲渡損益はなかったものとされ課税されないというものです。
住宅ローン減税の拡充
従来の住宅ローン減税は10年間合計で最大300万円で、平成25年12月31日で終了することになっていましたが、これが平成26年3月31日まではそのまま延長され、更に平成26年4月1日からは所得税の減税金額が10年間合計で最大500万円までに拡大されました。
上場株式等の配当に対する源泉徴収税率の変更
上場株式等の配当に対する源泉徴収税率が現行所得税7%、住民税3%の合計10%から所得税15%、住民税5%の合計20%に引き上げられます。
延滞税、利子税、還付加算金等についての見直し
延滞税、利子税、還付加算金等の利率が年3~7.3%程度引き下げられます。
平成26年4月1日以降
消費税の税率が5%から8%へ引き上げ
領収書の免税点の引上げ
今まで記載金額3万円未満の領収書には印紙を貼付する必要がありませんでしたが、改正後は5万円未満の領収書に印紙を貼付する必要がなくなります。
不動産譲渡契約書、請負契約書などの印紙税の税率の特例の拡充
不動産譲渡契約書や請負契約書などに貼付する印紙の金額が軽減されます。
例 契約金額 1,000万円超5,000万円以下 現行15,000円 改正後10,000円など
平成27年1月1日以降
所得税の最高税率の引上げ
課税所得4,000万円を超える所得については所得税の税率が現行40%から45%に引き上げられます。
相続税の基礎控除の引き下げ
相続税を計算する場合に相続財産から控除できる基礎控除額が現在『5,000万円+1,000万円×法定相続人数』であったのが『3,000万円+600万円×法定相続人数』に引き下げられます。
これによって相続税の申告が必要な人数が増加し、もともと申告が必要であった人の納税額も増加することになります。
相続税の税率の引上げ
課税される財産額が以下の場合、相続税の税率が以下のとおり引き上げられます。
課税財産額 |
現行税率 |
改正税率 |
2億~3億円 |
40% |
45% |
3億~6億円 |
50% |
50% |
6億円超 |
50% |
55% |
相続税の対象資産を評価する方法のひとつである小規模宅地等の特例が拡充されます。
自宅の土地を金額で評価する場合、現行240㎡までの広さの土地である場合は評価額を軽減することができるのですが、その軽減される対象の土地の広さが330㎡まで拡大されます。
贈与税の税率の見直し
贈与を受けた財産額が以下の場合、贈与税の税率が以下のとおり変更されます。
年間贈与金額合計 |
現行税率 |
改正税率 |
1,000万円超 1,500万円以下 |
50% |
45% |
1,500万円超 3,000万円以下
|
50% |
50% |
3,000万円超 |
50% |
55% |
20歳以上の人が父母、祖父母などから贈与を受けた場合の税率を見直し
贈与を受けた財産額が以下の場合、贈与税の税率が以下のとおり変更されます。
年間贈与金額合計 |
現行税率 |
改正税率 |
300万円超 400万円以下 |
20% |
15% |
400万円超 600万円以下 |
30% |
20% |
600万円超 1,000万円以下 |
40% |
30% |
1,000万円超 1,500万円以下 |
50% |
40% |
1,500万円超 3,000万円以下 |
50% |
45% |
3,000万円超 4,500万円以下 |
50% | 50% |
4,500万円超 |
50% |
55% |
相続時精算課税制度の拡充
贈与した時には贈与税を課さない代わりに実際の相続が発生した時にはその贈与分も相続財産に含めて相続税の対象とする制度で、その贈与する人の年齢が65歳以上でないとこの制度を利用できなかったのですが、この制度を利用できる贈与する人の年齢が65歳以上から60歳以上に引き下げられました。あわせて贈与財産を受け取る人の要件に孫が加えられました。
事業承継税制の見直し
上場していない株式等の相続税・贈与税の納税猶予の制度がありますが、その適用要件の緩和、負担の軽減、手続きの簡素化等がなされます。
平成27年10月1日以降
消費税の税率が8%から10%へ引き上げられます。
平成28年1月1日以降
金融所得課税の一体化の拡充
国債、外国国債、地方債、社債などの公社債のうち一定のものについて発生した利子や売却損益について、証券会社の特定口座に含めて処理することが可能になり、その他の金融商品等との損益通算が可能になります。
以上、平成25年の税制改正に関する主なものを簡単にあげてみました。今回の税制改正は皆さんに関係するものが数多く含まれています。
詳しい内容や、適用要件などにつきましては専門家にご相談の上、活用してください。
(このコンテンツは、平成25年5月1日現在の法令・通達等により作成しています。)