M-aid web版 Vol.17
公的年金の話
最近は大地震や原発事故もあり、ニュースなどでもあまり大きく報じられることが
少なくなっているようにも思えますが、日本の公的年金制度は危機的な状況です。
『社会保障と税の一体改革』の議論を聞いていると、どうやら消費税を増税したいということ、
そして年金は将来的には支給開始年齢を68~70歳に引き上げたいということが政府の考え方のようです。
「えっ70歳までもらえないなんて…!日本人の平均寿命って何歳だったかな(注1)」
と考えてしまったのは私だけでしょうか?
しかし、公的年金といっても老齢年金だけではありません。遺族年金や障害年金もありますので、もらえる時になって初めてありがたさがわかるものなんでしょうね。
そこで今回の本題。
公的年金をもらうようになったら気をつけたいことを書いてみたいと思います。
まず税金の話
遺族年金をうけとることになった場合は、所得税は非課税になっています。
もちろん住民税もかかりませんし、ついでに言えば相続税も贈与税も消費税も何もかかりません。
障害年金も同様です。そして所得税法上の扶養家族になるかどうかの判定基準にも、
遺族年金や障害年金の額は含めません。年末調整の時にはご注意ください。
老齢年金は、雑所得として所得税がかかります。
ただし、下表のように計算した『公的年金控除額』を差し引いた金額(公的年金等の雑所得)に税率をかけた金額が、この年金に対する所得税額となります。他にも所得がある場合は税率や計算方法が変わることがあります。
確定申告が必要となります(注2)
在職老齢年金の話
でも60歳を超えて給料をもらっていると、老齢厚生年金が支給停止になることがあります。
★60歳から64歳までの方で老齢厚生年金の受給資格がある方の場合★
厚生年金の基本月額(注3)と給料(総報酬月額相当額)(注4)の合計額が、
28万円までだと全額支給されますが、それを超えると全部または一部年金支給停止されてしまうのです。
例えば年金の基本月額が20万円、総報酬月額相当額の月額が25万円の場合には
(25万円+20万円-28万円)×1/2=85,000円、月額 85,000円が支給停止になってしまいます。
給料が多くなればなるほど年金支給停止額は大きくなります。
計算式は以下の表のようになります。
基礎月額+総報酬月額 | 基礎月額 | 総報酬月額 | 支給停止額の計算式(月額) |
28万円以下 | - | - | 全額支給(支給停止なし) |
28万円超 | 28万円以下 | 46万円以下 | (総報酬月額+基礎月額-28万円)×1/2 |
28万円以下 | 46万円超 | (46万円+基礎月額-28万円)×1/2+総報酬月額-46万円 | |
28万円超 | 46万円以下 | 総報酬月額×1/2 | |
28万円超 | 46万円超 | 46万円×1/2+総報酬月額-46万円 |
注意:28万円・46万円は、政令で自動改定されます。
★雇用保険法による高年齢雇用継続給付を受けられる場合は、在職老齢年金の調整に加えて高年齢雇用継続給付との調整も行われます。
★65歳以上の方の場合★
厚生年金の基本月額と給料(総報酬月額相当額)の合計額が、
46万円までだと全額支給されますが、以下の表のように支給停止額が決まっています。
基礎月額+総報酬月額 | 支給停止額の計算式(月額) |
46万円以下 | 全額支給(支給停止なし) |
46万円超 | (総報酬月額+基礎月額-46万円)×1/2 |
特に会社の社長さんは長く現役を続けられることが多いと思います。
自分の報酬の額が少し違うだけで年金の額が大きく変わってくるということもあり得ますので注意が必要です。
詳しくは社会保険労務士等の専門家にご相談いただくか、日本年金機構のホームページ等をご参照下さい。
税制改正の動向は国税庁のホームページ等をご参照下さい。
注
1) 男性79.59歳 女性86.44歳(厚生労働省「平成21年度 簡易生命表」より)
2) 平成23年度の税制改革で申告不要制度ができる予定になっていますが6/20現在未定です。
3) 基本月額=加給年金を除いた年金額の1/12
4) 総報酬月額相当額とは(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与の合計×12)
(このコンテンツは、平成23年6月20日現在の法令・通達等により作成しています。)
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