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M-aid web版 Vol.16

法人税法上の法人の分類


今回は、法人税が課税される法人にはどのような種類があるのかについて話したいと思います。


 まず、法人税の成り立ちから見ていきますと、明治32年に創設(所得税は明治20年)されましたが、当初から法人税法上において法人を実在するものと捉えるか擬制されたものと捉えるかについての議論があったそうです。戦後のシャウプ勧告においては、「法人は実体がなく制度上において擬制されたものであって、法人税は所得税の補完的なもの」という考え方に則り、個人の資産について富裕税を課すことや有価証券譲渡益に所得税を課税するなど個人への課税を強化する一方、法人税については35%の比例税のみに統一することや法人の清算所得課税を廃止するなどの改正が行われたそうです。
 しかし、現在の一般的な法人税法上の法人の捉え方としては、「法人は実在しており、個人からは独立した納税義務者であって、法人の所得は個人の所得とは別の課税の対象である」というように考えられています。

内 国 法 人 と 外 国 法 人

まず、国際課税上内国法人外国法人二つに分けられます。
内国法人とは、日本国内の法律によって設立された法人で、日本に本店または主たる事務所を有する法人のことです。内国法人は、外国にある支店の所得についても日本の法人税が課されます。
外国法人とは、内国法人以外の法人のことで、外国法人は国内源泉所得(日本で稼いだ所得)を有するとき、法人課税の信託の引受を行うとき、退職年金業務等を行うときのみ日本の法人税が課されます。
 ※ 法人課税信託とは、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託を除いた次に掲げる信託で、
   受託者に法人税が課される信託のことです。
   ⅰ)受益証券発行信託 
   ⅱ)受益者等が存しない信託 
   ⅲ)法人が委託者となる一定の信託 
   ⅳ)投資信託 
   ⅴ)特定目的信託



内 国 法 人 の 分 類 と 概 要

法人税法上の内国法人については、五つに分類することができ、また、大まかな概要は以下のようになります。


① 公 共 法 人
  例)㈱日本政策金融公庫、国立大学法人、地方公共団体、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会、
  財務大臣が指定した独立行政法人(原子力安全基盤機構、国立印刷局、国立美術館、雇用・能力開発機構、
  造幣局 等々)など 


  この法人については法人税の納税義務はありません。
  国や地方が営むべき事業を代行する団体で、法人税法第4条第二項において納税義務がないと
  規定されています。




② 公 益 法 人 等

  例)社会医療法人、貸金業協会、行政書士会、健康保険組合、司法書士会、宗教法人、商工会議所、
  信用保証協会、税理士会、日本赤十字社、弁護士会、預金保険機構、財務大臣が指定した独立行政法人
  (宇宙航空研究開発機構、科学技術振興機構、中小企業基盤整備機構 等々)、
  財務大臣が指定した農業協同組合連合会、NPO法人など


  公益法人等については平成20年12月に公益法人制度改革によって新しい法律が施行されことに伴い、
  法人税法上は以下のように二つに分類されています。



1)公益社団法人及び公益財団法人
    一般社団法人及び一般財団法人のうち「公益認定法(略称)」に基づいて行政庁により認定された
    法人で、公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人です。
    一般社団法人・一般財団法人とは、「一般社団・財団法人法(略称)」に基づいて設立された法人
    のことで、営利を目的としない(株式会社のように剰余金の分配を目的としない)団体のことです。
    社団とは、人の集まりでその集まりが団体として独自に存在し、実態が備わったもののことで、
    財団とは、一定の目的に基づいて結合された財産の集合体のことです。
    公益社団法人又は公益財団法人に該当する場合には、みなし寄付金の損金算入について
    特例があります。
    みなし寄付金とは、収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業で自らが行う公益目的事業
    のために支出した金額のことです。 


  2)非営利型法人

    一般社団法人または一般財団法人のうち、非営利性が徹底された法人又は共益的活動を目的とする
    法人に該当するものとされています。


   <1>非営利性が徹底された法人とは以下の四つの要件を満たす法人です。
     ⅰ)定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること 
     ⅱ)定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体、
       公益社団法人若しくは公益財団法人、公益認定法第5条17号イからトに掲げる法人
       (学校法人、社会福祉法人等々)に帰属する旨の定めがあること 
     ⅲ)ⅰ)又はⅱ)の定款の定めに反する行為を決定し、又は行ったことがないこと 
     ⅳ)各理事について、当該理事及び当該理事の親族や特殊の関係ある者の理事の数が、
       理事の総数の3分の1以下であること 


   <2>共益的活動を目的とする法人とは以下の七つの要件を満たす法人です。
     ⅰ)会員に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的としていること 
     ⅱ)定款に会費の金額の定め又は会費の金額を社員総会等の決議により定める旨の定めがあること 
     ⅲ)主たる事業として収益事業を行っていないこと 
     ⅳ)定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと 
     ⅴ)定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(<1>ⅱ)に掲げる法人または
       その目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除きます)に帰属する
       旨の定めがないこと 
     ⅵ)ⅰ)からⅴ)及びⅦ)に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人又は団体に
       剰余金の分配その他の方法により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと 
     ⅶ)<1>のⅳ)と同じ 


  この公益法人制度改革により従来の社団法人・財団法人は、そのまま特例民法法人として法人税法上の
  法人の分類では公益法人等にとどまりますが、平成20年12月1日から5年の間に行政庁に対して、
  公益社団法人・公益財団法人あるいは一般社団法人・一般財団法人への移行申請をしなければ、
  解散したものとみなされます。
  公益法人等については収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合、退職年金業務等
  を行う場合にのみ法人税が課されます。また、NPO法人の法人税率やみなし寄付金の損金算入
  については公益法人等とは取り扱いが異なります。
  法人税法上の収益事業とは、法人税法上の34種類の事業(物品販売業、不動産販売業、製造業、
  請負業等 法人税法 施行令第五条第一項)を、継続して事業場を設けて営むことをいい、
  その事業に付随して行われる行為も含まれます。

③ 協 同 組 合 等

  例)漁業協同組合、商店街振興組合、信用金庫、農業協同組合など 
  協同組合とは、共通する目的のために個人あるいは中小企業者等が集まり、事業体を設立して
  民主的な管理運営を行っていく非営利の相互扶助組織のこと


  以下④普通法人のように、全ての所得に対して課税されますが、特例として他の法人と
  比べて法人税率が低いこと、事業分量配当の損金算入ができることなどがあります。
  事業分量配当とは協同組合等と組合員その他の構成員との取引により生じた剰余金について、
  各組合員等が利用した事業の分量等に応じて分配する金額のことで、協同組合等の所得の金額の
  計算上損金に算入できます。






④ 普 通 法 人 

  例)株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、公益法人等でない一般社団法人または一般財団法人など


  全ての所得に課税されます。




⑤ 人 格 の な い 社 団 等

  例)町内会、研究会、PTA、同業者団体など 
  法人でない社団または財団で代表者又は管理人の定めがあるもの


  民法第667条の任意の組合や商法第535条の匿名組合のようなものは法人税を課されません。
  組合員等に対して所得税が課されます。
  人格のない社団といわれるのは次の5つの要件を満たすものです(昭和39年10月15日最高裁判例)。
   ⅰ)協同の目的のため結集した人的結合体であること 
   ⅱ)団体としての組織を備えていること 
   ⅲ)多数決の原則が行われていること 
   ⅳ)構成員が変更しても団体が存在すること 
   ⅴ)その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が
     確定しているもの


  このような法人ではない団体であっても、法人税法上は法人とみなして、収益事業を行う場合、
  法人課税の信託の引受を行う場合、退職年金業務等を行う場合には法人税が課されます。






<以下法人税の税率表>

 

 

 

法人税法

第66条第一項

法人税法第66条第二項

中小法人の年所得800万以下の金額に対する軽減税率

法人税法

第66条第三項

① 公共法人  納税義務無し
② 公益法人等 公益社団法人 公益財団法人 30% 22%(18%)
非営利型法人 30% 22%(18%)
特例民法法人(民法34条法人) 22%(18%)
③ 協同組合等  22%(18%) 注2
④ 普通法人  30% 22%(18%) 注1
⑤ 人格のない社団等  30% 22%(18%)


( )内・・・平成21年4月から平成23年6月30日までに終了する各事業年度については年800万円以下の金額に対する税率
注1・・・資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人と完全支配関係にある子会社法人については適用なし
注2・・・特定の協同組合等の所得の金額のうち年10億円を超える部分については税率26%
*特定の医療法人については法人税法第66条第一項の規定にかかわらず税率22%で、平成21年4月1日から平成23年6月30日までの間に終了する各事業年度の所得について年800万円以下の金額については税率18%
*NPO法人の適用税率は普通法人と同じ






 以上、法人税が課税される法人について概略を書きましたが、もし実際に法人の設立や組織変更等を
 検討されることがある場合には、より具体的な内容と各個別の事情等を勘案する必要がありますので、
 事前に専門家にご相談されることをお勧め致します。


(このコンテンツは、平成23年6月1日現在の法令・通達等により作成しています。)

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