Everybody Genius【経営者はみんな天才!】
加藤 和裕 様
株式会社 三洋堂書店 代表取締役 最高執行役員社長
事業内容:新刊書籍・雑誌・文具・パソコンソフトの小売販売
DVD・ビデオ・CDのレンタル及び販売
リサイクル並びに新作ゲームソフトの販売
http://www.sanyodo.co.jp/
株式会社三洋堂書店の加藤和裕社長にお話を伺いました。中部地方を中心に書店を展開されており、近年は順調に新規出店を重ねておられます。2006年11月には、ジャスダック上場を果たされました。
従来の書店業態ではなく、新業態へ果敢に挑戦し、さらなる発展を目指すことへの想いを語っていただいています。
森川:郊外型の大型店舗で経営をされていますが、どのように展開されてきたのですか。
加藤社長:創業時、父が名古屋のはずれ杁中で20坪の小さなお店からスタートし、建てかえをしながら「いつかもっともっと大きなお店を」と考えていました。本はお店の大きさで並べる量に制限があるため、お客様がお越しになったとき「あいにくその本はございません」と言うのではなく、「その本はこちらにございます」と言える店舗を目指していました。お客様の求める本があるということがお客様に対するサービスですし、プライドです。お客様が満足するようなお店を作るためにはもっとお店を大きくし、もっと品揃えを良くしたいと思っていました。本は価格が全国どこで買っても一緒です。内容も品質も同じです。となると品揃えを良くするためには大きなお店がいいと思い、1980年代は、いつかは(大阪で言うと梅田や難波に)1000坪の大型店舗を作ろうと考えていました。1990年が転機だったのですが、我が社は1000坪のお店を目指すのではない、と。今都会のど真ん中にはそういった都市型の大型書店がたくさんある。ローカルな田舎で本屋さんに行こうと思うと一山超えていかなければならない。本屋さんがあると言っても小さい店しかない。そういう書店空白地域でお父さんお母さんが子供を連れて行って、絵本や学習参考書が買えるような本屋、郊外型の展開をしていこうという事で、都心に1000坪の店を作るのではなく、全国に1000店の店を作ろうという考えになりました。今では田舎町の津々浦々にお店を展開していくという考えで経営を行っています。
森川:私自身本屋に行きたいタイプですのでよく足を運ぶのですが、今はアマゾンのようなインターネットで本を検索することが出来る時代になっていますが、この時代の流れについてはどう感じていらっしゃいますか。
加藤社長:アマゾンに関しては、アメリカですごい勢いで伸びてその後日本に来ました。日本でも普及していますが、将来的には書籍マーケットの2割くらいまでのシェアをとると思います。自分が欲しい本が必ず手に入るか、出会えるかという可能性はインターネットのほうが非常に高いのです。ネットがマーケットで占めるのが2割。残りの8割は書店。その部分でお客様に対するサービスレベルを高めれば我が社としてはまだ成長する余地があるということになります。二兎を追うのはやめ、三洋堂書店が日本の書籍マーケットの中で非常に大きなシェアが取れるようになってきたときに、その商品開発力を武器に我が社でしか提供できない、我が社独自の差別化が出来る商品を開発していくことが今後の課題です。
森川:亡くなった先代社長様のお話の中で車を例にして、社会的な変化をもたらしたのはベンツやフェラーリではなく、軽自動車やカローラであるとおっしゃっていたのが非常に印象的でした。御社の考えが読者を育てるとか読書習慣を変えるということにつながっているのだと捉えました。
加藤社長:我が社が提供しているのは安価な娯楽です。目的買いのお客様が非常に少ない。圧倒的多数のお客様が特に何か買おうと決めずに書店に立ち寄ります。購買率で言うと立地によって違いはありますが、本屋の場合が約5割です。入店したけれど何も買わずに帰る比率が半分ということになります。駅前では約3割くらいになります。何も買わずに店を出ることができるのが本屋の良いところでもあります。そういった何となく何かないかなぁと来店されるお客様が我が社の今後の主力客層なんです。父がよく言っていたのですが、「百科事典は売るな」「全集は売るな」と。例えば「日本の歴史」は全部で20巻セットでの贈答品もあるのですが、我が社ではセットでは置かず1巻ずつなんです。1巻から順番に買って欲しいのです。月に1回、もしくは2ヶ月に1回でもいいので20巻揃えるために20回お店に来て欲しいのです。単価の高い商売をするとどんどん来店頻度が下がってくるのです。
森川:私はある程度決めて買いに行くタイプですが、でもいろいろみている内に買おうと決めていた本だけでなく、それ以外の本に出会うこともあります。そういうときは非常にうれしくなりますね。
加藤社長:売り場がそういう構成で出来ているんですね。関連購買をそそるような商品構成で。ある本を買うお客様が興味を引きそうな関連する本はすぐそばに置いて、複数購買・関連購買に結びつく。東京の丸の内界隈では専門書が非常に売れるのですが、そこに来店するビジネスマンにとっては必要不可欠なんです。税理士もどうしても買わないといけない本というのがありますよね。
森川:そうですね。ただ新しい制度が出来てそれについて詳しくピックアップしたような書籍というのが、無い書店には全く無く、ある書店にはたくさん置いてあったりするんですよね。
加藤社長:そうですね。食料品で言うと小さな店としては、まずコンビニエンスストア、少し大きくなってスーパーマーケット、一番大きくなるとデパートという区分ですが、書店に関しては、コンビニ規模からデパート規模まですべて書店と言うんですよね。税務関係の専門書が欲しいと思っても決して小さな書店では買わないですよね。我が社が狙っているのは、都市型大型総合書店でもコンビニ型でもなく、本屋の中でも複合型書店と言われるマルチパッケージストア、本、CD、DVD、ゲームソフトなどを複合的に販売したりレンタルしたり中古リサイクルしたりという商品構成をしているお店です。普通の人々の普段の暮らしが豊かになるよう「本とのであいのおてつだい」をテーマとして今後も展開をしていきます。
森川:新聞があってラジオが出てきたときに情報ツールとして新聞は無駄になると言われたが無くならなかった。テレビが出てきても、インターネットが出てきてもなお新聞はあります。やはり紙の上にメッセージを残すことは文化や歴史を語り継ぐものであり、書物は大昔から残っています。本の役割というのはすごく大事ですね。