M-aid web版 Vol.56
2020年度 年末調整変更点のまとめ
今年、2020年の年末調整は大きく制度が変わります、その変更点をまとめました。
① 基礎控除額の引き下げ
基礎控除額はこれまで収入・所得金額に関係なく一律38万円でしたが、平成30年度税制改正に伴い、令和2年からは一律48万円に引き上げられます。
(住民税については現行33万円→43万円)
但し、合計所得金額(所得控除前の所得金額)が2,400万円~2,500万円の場合は控除額が所得に応じて減っていきます。2,500万円超の場合は控除額がゼロとなります。
所得税 | 住民税 | |||
合計所得金額 | 令和元年分まで | 令和2年分から | 令和2年度分まで | 令和3年度分から |
2,400万円以下 | 38万円 | 48万円 | 33万円 | 43万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 | 29万円 | ||
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 | 15万円 | ||
2,500万円超 | 0円 | 0円 |
② 給与所得控除の見直し
給与所得控除とは、所得税の計算する際に自動的に収入から差し引かれる金額のことです。2020年の年末調整からは、一律で10万円が引き下げられることになりました。また、給与所得控除の上限額が220万円から195万円に引き下げられるため、年収が850万円を超える人は10万円以上の引き下げとなり、控除額が少なくなるのでその分は増税となります。
しかし、年収850万円までの人は基礎控除の引き上げと給与所得控除の引き下げで相殺されますので、この見直しに関しては増税でも減税でもありません。
また、子育てや介護を行っている人が、給与所得控除の見直しで税負担増とならないように調整する措置として、「所得金額調整控除」という控除が創設されることになりました。
給与収入850万円超で以下のいずれかに該当する従業員は、年末調整で給与所得から調整控除されます。
- (ア)本人が特別障害者に該当する場合
- (イ)年齢23歳未満の扶養親族を有する場合
- (ウ)特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
- 次の金額(0~15万円)を給与所得金額から控除します。
- 【給与等の収入金額(上限1000万円)-850万円】×10%
- なお、適用を受けるには年末調整で所得金額調整控除申告書の提出が必要となります。
給与等の収入金額 (A) |
給与所得控除額 | ||
令和元年分 所得税まで |
令和2年分以降 | ||
右以外 | 子育て・介護世帯 | ||
162.5万円以下 |
A×40% |
55万円 | 55万円 |
162.5万円超 180万円以下 |
A×40%-10万円 | A×40%-10万円 | |
180万円超 360万円以下 |
A×30%+18万円 | A×30%+8万円 | A×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
A×20%+54万円 | A×20%+44万円 | A×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
A×10%+120万円 | A×10%+110万円 | A×10%+110万円 |
850万円超 1,000万円以下 |
195万円(上限額) | ||
1,000万円超 | 220万円(上限額) | 210万円(上限額) |
③ ひとり親控除の新設と寡婦(夫)控除の見直し
近年「未婚のひとり親」も増加している事に対応し、令和2年度税制改正で同制度の抜本的見直しに加えて、あらたに「ひとり親控除」が創設されることとなりました。
現行の寡婦(寡夫)控除は、死別、離婚、生死不明の状態が要件となっており、未婚の場合は適用対象外となっていた事から、全てのひとり親家庭に対して公平な税制を実現する観点から、ひとり親控除が設けられました。適用者については、婚姻歴や男女の性別を問わず控除額は同額となります
- 対象者
現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者で、下記の要件に該当する者
(イ)総所得金額等の合計額が48万円以下の同一生計の子を有すること
(ロ)本人の合計所得金額が500万円以下であること
(ハ)住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと - 控除額
ひとり親控除の対象者の所得税、住民税の計算上、総所得金額等から下記の金額を控除する。
所得税:35万円 住民税30万円
また、「ひとり親控除」の創設に伴い、寡婦(寡夫)控除については下記のとおり見直しが行われました。
- 寡夫控除は廃止する(「ひとり親控除」に吸収)
- 寡婦控除については、「ひとり親控除」の適用要件に該当せず、かつ下記の要件を満たす女性に対して適用する。
(イ)夫と死別、離婚、夫が生死不明の状態であること(離婚の場合は、扶養親族を有すること)
(ロ)本人の合計所得金額が500万円以下であること
(ハ)住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと
- なお、寡婦控除額(所得税27万円 住民税26万円)は従前とおりです。
🔲・・・寡婦控除 □・・・ひとり親控除
本 人 が 女 性 |
配偶者 | 死別 | 離別 | 未婚 ~500万 |
||||
本人所得 | ~500万 | 500万~ | ~500万 | 500万~ | ||||
扶 養 親 族 |
有 | 子 | 35万円 | - | 35万円 | - | 35万円 | |
子以外 | 27万円 | - | 27万円 | - | - | |||
無 | 27万円 | - | - | - | - |
本 人 が 男 性 |
配偶者 | 死別 | 離別 | 未婚 ~500万 |
||||
本人所得 | ~500万 | 500万~ | ~500万 | 500万~ | ||||
扶 養 親 族 |
有 | 子 | 35万円 | - | 35万円 | - | 35万円 | |
子以外 | - | - | - | - | - | |||
無 | - | - | - | - | - |
基礎控除や給与所得控除の額が改正されたため、配偶者控除や扶養親族の合計所得金額にも影響がでる可能性がありますので、注意が必要です。
(このコンテンツは、令和2年10月31日現在の法令・通達等により作成しています。)